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【収益性分析とは】

Studing Money⑩-3

目次

収益性とは

収益性は、投下資本をどの程度有効に活用しどの程度の利益を上げられているかを図る考え方。

企業は、投下資本を商品やサービスに変えて顧客に販売しリターンを図ります。

更に回収した資本の再投資を繰り返し行うことで、当初よりも大きなリターンを生み出すことが出来ます。

しかしながら、当初に投下した資本よりも少ないリターンの時はその差額は損失となり再投資に支障を来すことになります。

この循環プロセスを潤滑にするためにも適正な利益の確保は必要であり、確保が出来ているかを分析するのが『収益性分析』です。

 

収益性分析

収益性の分析は、『損益計算書』の分析が中心となります。

分析手法は、『資本利益率』を中心に比較分析体系となっているのが一般的です。

この比率分析体系は、各比率を個別的に分析・検討するのではなく、各比率それぞれを他の比率と関連させ分析します。

収益性の分析は、『総資産経常利益率』を展開していくことで、全般的・総合的に財務分析を行うことが出来ます。

※製造業の回転率の場合は、商品・製品・半製品・原材料・仕掛品・貯蔵品など細かく分析することが一般的です。

比率分析体系図

①《総資産経常利益率》

  • 売上原価率
  • 売上高総利益率
  • 売上高販管費率(売上高人件費率/個別費用率)
  • 売上高営業利益率
  • 売上高営業外収益率
  • 売上高営業外費用率(金融費用負担率)
  • 売上高経常利益率

 

②《総資産経常利益率》

  • 総資産回転率
  • 流動資産回転率(現金・預金回転率/売上債権回転率/たな卸資産回転率)
  • 固定資産回転率(有形固定資産回転率/無形固定資産回転率/投資その他の資産回転率)

※収益性の分析は、『比率分析体系図』が中心ですが、これ以外からの分析も重視する必要があります。

収益性分析の留意点

この比率分析体系図を用いた収益分析は、主に大企業の収益性分析に適した手法です。

中小企業等においては、財務諸表の金額そのものを利用した実数分析が中心となります。

企業が小さくなるほど労働集約的になり、少ない投下資本で利益を上げることになります。

少ない資本では高い総資産経常利益率となるため、収益性を判定することはできません。

中小・零細企業は、個々の勘定科目を分析するほうが重要となります。

 

※売上債権やたな卸資産の中に滞留部分が含まれているとこは注意が必要です。

資産として計上すべきではないと判断した時は、取り除いて比率分析等を行う必要があります。

 

※単に比率分析等の結果だけで判断をせず、過程を読み取ることがとても重要です。

総体的に意図を把握することで、全体の意味合いが大きく変わってきます。

分析数値は読取り方が『カギ』となります。

 

資本利益率

資本利益率は、収益性の総合的な判定指標となります。

一定期間内に投下した資本に対しどれだけ利益を上げたかを示します。

 

① 資本利益率(%)= 利益(損益計算書) ÷ 資本(貸借対照表) × 100

 

② 資本利益率(%)= 利益(損益計算書) ÷ {(期首資本+期末資本)÷ 2 } × 100

※期首と期末の平均値を分母とすることが一般的です。

資本利益率の種類

利益と資本のとの関係は組み合わせによって何通りもの資本利益率を考えることが出来ます。

《利益》

  • 売上総利益
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 当期純利益

《資本》

  • 総資産
  • 経営資本
  • 株主(自己)資本

※実務上よく用いられる資本利益率は、『総資産経常利益率(ROA)』と『経営資本営業利益率』と『株主(自己)資本当期純利益率(ROE)』の3つです。

 

総資産経常利益率(ROA)

総資産に対する経常利益の比率で企業全体の観点から収益性を総合的に判断する指標

  • 総資産経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 総資産 × 100

※実務上では、比較する指標数値(業界平均値等)の算出にそろえる配慮が必要です。

※総資産経常利益率は、企業規模が拡大するにつれ低下する傾向にあります。(労働集約的企業⇒資本集約的企業)

 

経営資本営業利益率

経営資本に対する営業利益の比率で企業の本来の営業活動の観点からの収益性を判断する指標

  • 経営資本営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 経営資本 × 100
  • 経営資本 = 総資産 - 建設仮勘定 - 遊休不動産 - 投資その他資産 - 繰延資産

※厳密には経営資本の算出は困難です。(有形固定資産から遊休不動産のみを抜き出すのは困難)

 

株主(自己)資本当期純利益率(ROE)

株主(自己)資本に対する当期純利益の比率で、株主の投下した資本に対してどの程度の当期純利益を得ているか株主の観点からの収益性を判断する指標

  • 株主(自己)資本当期純利益率(%) = 当期純利益 ÷ 株主(自己)資本 × 100

※『当期純利益』は最終利益で株主に帰属する利益です。

※株主資本は、資本金・資本剰余金・利益剰余金などの合計です。

※自己資本は、純資産から新株予約券などを控除した額です。

その他の資本利益率
  • 総資産営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 総資産 × 100
  • 株主(自己)経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 株主(自己)資本 × 100
  • 総資産経常利益率 = 売上高経常利益率 × 総資産回転率
  • 売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
  • 総資産回転率(回)= 売上高 ÷ 総資産
  • 売上原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高材料費率(%)= 材料費 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高労務費率(%)= 労務費 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高製造経費率(%)= 製造経費 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100 :(粗利率)
  • 売上高総利益率(%)= 1 - 売上原価率
  • 売上高販管費率(%)= 販管費 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高人件費率(%)= 人件費 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100
  • 売上高営業外損益比率(%)=(営業外収益 - 営業外費用) ÷ 売上高 × 100
  • 金融費用負担率(%)= 金融費用 ÷ 売上高 × 100
  • 営業利益対金融費用比率(%)= 金融費用 ÷ 営業利益 × 100
  • インタレスト・カバレッジ・レシオ(%)= (営業利益 + 金融収益)÷ 金融費用 × 100
  • 流動資産回転率(回)= 売上高 ÷ 流動資産
  • 固定資産回転率(回)= 売上高 ÷ 固定資産
  • 現金・預金回転率(回)= 売上高 ÷ (現金・預金)
  • 売上債権回転率(回)= 売上高 ÷ 売上債権
  • たな卸資産回転率(回)= 売上高 ÷ たな卸資産
  • 有形固定資産回転率(回)= 売上高 ÷ 有形固定資産
  • 経営資本回転率(回)= 売上高 ÷ 経営資本
  • 株主(自己)資本回転率(回)= 売上高 ÷ 株主(自己)資本
  • 買入債務回転率(回)= 売上高 ÷ 買入債務

 

あとがき

収益性を見る上で、重要となることは数年にわたり財務内容を比較するところにあります。

ポイントを絞り比較の推移を分析することや業界平均とを見比べることで収益を向上させる手がかりが見つかると思います。

業種・業態によっても比較される分野は異なると思いますので参考にしてみて下さい。

 

参考情報

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