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【安全性分析(資本・資産・相互関係の構成分析)とは】

Studing Money⑩-4-4

目次

安全性とは

安全性は一般的に『健全性』『安定度』『流動性』『資金繰り状態』などを捉えることが出来ます。

健全性

企業経営の安全度をいい、主として税務面での健全性に主眼を置いています。貸借対照表(B/S)の各勘定科目の内容を重視し、支払手段である『資産』と支払い義務である『負債』をみて支払う能力が十分にあるかどうかに着目します。

 

安定度

支払手段である資産と支払義務である負債の割合、および流動・固定の構成割合を把握することで企業経営の『安定度』がわかります。

 

流動性

流動資産で短期的な支払が予定されている流動負債がカバーできているか、短期的な調達と運用の『バランス』が取れているかを見るものです。

 

資金繰り状態

資金の運用・調達の状況は、つきつめれば資金繰りと同じです。『資金繰り』とは、日常的、短期的な現金を中心とした資金繰りだけでなく資金という概念を中心とした長期の資金繰り状況を含む広い意味でもあります。安全性とは企業経営の健全性を意味しますが、企業が健全であるということは同時に『資金繰りが順調』であることを意味します。

 

安全性分析と貸借対照表

貸借対照表における安全性分析

貸借対照表は、資金の収支状況を直接的に表すものではないですが、一時点の財政状態を示していると言われています。『財政状態』とは、企業の資金がどのような源泉から調達され、それがどのように運用されているかの流れを意味します。

 

貸借対照表をベースにした主な考え方

①資産と資本(貸借対照表上では負債・純資産)がそれぞれどのような構成になっているのか、両者の関係はどのようになっているのか(流動性・株式資本比率など)

②資金を調達し運用するにおいて、それが効率的に行われているかどうか(回転期間分析・回転率分析など)

③その期間の資金運用・調達の動きを把握し、それらのバランス状態を見る(資金移動表・資金運用表分析など)

 

貸借対照表の検討方法

貸借対照表の分析によって企業の安定性を判断しようとする場合、まず全体構造を大きく読み取った後に細部の検討を行う必要があります。

 

比率による分析

資本構成の分析

①株主資本(自己資本)比率

株主資本(自己資本)比率とは、総資産(負債と純資産の合計額)に対する株主資本(自己資本)の割合を示すもので、いわば株主資本(自己資本)の充実度合いを示します。

株主資本(自己資本)比率は、高ければ高いほど安全性は高くなります。実質無借金経営であっても、買掛金等の負債は発生することから100%ではありませんが、可能な限り高める努力は必要となります。

この比率の理想は50%と言われていますが、全企業平均では20%~30%に留まっています。

 

  • 株主資本(自己資本)比率% = 株主資本(自己資本) ÷ 総資産 × 100

 

②負債比率

負債比率は、株主資本(自己資本)に対する負債割合を把握するものです。

負債という支払義務に対しては、資産という支払手段でカバーされることになりますが、株主資本(自己資本)はこの負債(支払義務)を『担保』にするという考え方が基本です。

 

  • 負債比率(%)= 負債 ÷ 株主資本(自己資本) × 100

 

資産構成の分析

資産構成の分析は、大きく捉えた場合には『流動資産』と『固定資産』及び『繰延資産』の総資産に占める割合です。

同業他社と比較して自社の特徴を掴むことが大切です。

細部にわたって検討する場合には、それぞれの中での区分(流動資産中の当座資産・たな卸資産・その他流動資産に占める割合・個々の勘定科目)などを把握することで特徴が捉えられます。

総資産は企業規模』を表しますので、そこに占める『たな卸資産』や『売上債権の割合』がその会社の規模に対し、大きい場合は、過剰在庫や不良債権となっている可能性があります。

 

  • 流動資産構成比率(%)= 流動資産 ÷ 総資産 × 100
  • 固定資産構成比率(%)= 固定資産 ÷ 総資産 × 100

 

流動資産と流動負債の相互関係の分析

①流動比率

流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合を示すもので、静態的安全性分析では最も重視されます。

返済すべき負債に対して同じ期間内で現金化して負債の返済に充当できる資産の倍率を表します。

一般的にはこの比率が高いほど安全性が高いと判断されており、200%が目安となります。

但し、優良企業であっても流動比率は120%~130%程度が多く業種によっても異なるため『同業他社比較』や『時系列比較』が重要になります。

 

この比率が低い場合には、静態的安全性は低いと判断されます。(倒産企業においても、流動比率が100%を下回る例は少なくありません)

短期的に支払うべき流動負債よりも短期的に現金化される流動資産のほうが少ない状態の場合には資金繰りが困難だと推定できます。

表面的に流動比率が高くても必ずしも安全でない場合があります。

  1. 現金(預金)に満期が1年超の固定性預金や借入金の担保に提供している拘束性預金が含まれる場合
  2. 受取手形に期日書換手形(ジャンプ手形)や不渡手形が含まれている場合
  3. 売掛金に回収不能債権や滞留債権が含まれている場合
  4. 有価証券に多額の含み損がある場合
  5. たな卸資産に不良在庫が含まれている場合
  6. その他流動資産に資産性に乏しいものや長期性資産が含まれている場合
  7. 引当金や未払金等が流動負債に計上漏れとなっている場合

この様な場合、表面的には流動比率は高く表れますが、安全性は決して高くありません。流動資産や流動負債の内容をよく見極める必要があります。

割引手形や裏書譲渡手形については資産性がなくなっているため、流動比率を算出する際には足し戻しを行わないことが肝要です。

  • 流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100

 

②当座比率

当座比率は当座資産の流動負債に対する割合を示したものです。

当座資産の範囲としては、流動資産の部に表示された『現金(預金)・受取手形・売掛金・有価証券』とするのが一般的です。(流動資産全体からたな卸資産を引いたもので代用することもあります)

当座比率は『換金性の高い資産』を短期的な債務返済能力の指標として用いられ高いほど安全性は高くなります。

当座比率は実務上では流動比率の半分以上であることが目安となります。業種ごとに異なるため同業他社比較や時系列比較が重要となります。

次のような場合に表示替えを行った後で当座比率を算出する必要があります。

  1. 現金(預金)に満期が1年超の固定性預金や借入金の担保に提供している拘束性預金が含まれる場合
  2. 受取手形に期日書換手形(ジャンプ手形)や不渡手形が含まれている場合
  3. 売掛金に回収不能債権や滞留債権が含まれている場合
  4. 有価証券に多額の含み損がある場合

割引手形や裏書譲渡手形については資産性がなくなっているため、流動比率を算出する際には足し戻しを行わないことが肝要です。

  • 当座比率(%)=当座資産 ÷ 流動負債 × 100

 

③現金・預金比率

現金・預金比率は『現金・預金』の流動負債に対する支払能力の割合を表すものです。(即時の支払能力を表す)

ここでの現金・預金も1年超の固定性・拘束性預金は除いて判断します。

当座比率が高くても、この『現金・預金比率』が低い場合には受取手形・売掛金が焦げ付いており資金繰りが困難となっている可能性があります。

現金・預金比率が極端に高い場合には、資金が有効活用されておらず効率性が悪い事が想定できます。

現金・預金比率の理想は20%とされていますが、他の比率同様に同業他社比較や時系列比較はとても重要です。

 

現金・預金比率(%)= 現金・預金 ÷ 流動負債 × 100

 

あとがき

このページでは、財務分析の中の『安全性(資本構成の分析・資産構成の分析・流動資産と流動負債の相互関係の分析)』について説明をしました。

時系列比較は比率分析を把握することで重要と考えています。私が当時業務にあたっていた際にも3期に渡り時系列比較をしておりました。

時系列比較をすると通年に渡り『良し悪し』が顕著に見えてきますので次の戦略を立てる際にも有効な分析かと考えています。

対象の業種ごとに比較表などを準備しておくとより顕著に状況が把握できるのではないでしょうか。

 

その他参考

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