【損益分岐点分析とは】
Studing Money⑩-5-1
目次
【損益分岐点とは】
売上高と費用の額が等しくなる売上高または販売数量を指します。
売上高での算出は『損益分岐点売上高』と言い、販売数量での算出は『損益分岐点販売数量』といいます。
売上高が損益分岐点以下に留まれば『損失』が生じ、損益分岐点以上になれば『利益』が生じる事となる(採算点とも呼ばれる)
【損益分岐点分析とは】
翌期の予想売上に対していくらの利益を上げる事が出来るのかなど予想するのに用いられます。
特定の利益を上げるためにどのくらいの『売上』が必要なのか、『費用』をいくらまで使うことができるのかなどを計算することが出来ます。
損益分岐点分析は企業の状態を客観的な検知から利用されているのが一般的です。
【損益分岐点分析の基礎】
損益分岐点分析は、『変動費』と『固定費』に着目し、『収益性』『安全性』を評価する手法です。
損益分岐点分析を行うための基本項目5種を見ていきます。
①変動費
- 生産量や販売量などの企業の『操業度の変化に比例して増減する費用』を指します。(原材料費・外注加工費・工場電力料・販売手数料など)
②固定費
- 操業度が変化しても『変化することのない費用』を指します。(人件費・減価償却費・不動産賃借料・保険料・固定資産税など)
③限界利益
- 『売上高から変動費を引いた金額』を限界利益と呼びます。
④変動費率
- 売上高の増加によって増加する費用の割合を指します。
- 変動費率(%)=変動費÷売上高
⑤限界利益率
- 限界利益を売上高で割ったものを指します。売上高1単位の増加によって、いくらの追加利益が獲得できるかの割合を示します。100%から変動費率を差し引いて求めることも出来ます。
- 限界利益(%)=限界利益÷売上高
- 限界利益(%)=1-変動費率
【損益分岐点売上高】
損益分岐点は『売上高=総費用』となります。
- 売上高=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}
- 売上高=固定費÷限界利益率
固定費と限界利益を用いることにより売上高を算出することが出来ます。
【総費用の分解】
変動費と固定費の分解方法には、『個別費用法』『総費用法』『スキャター・グラフ法』『最小自乗法』等ありますが、いずれも決定的なものはありません。
実務上比較的多く使用されている『個別費用法』と小企業向けの『総費用法』を説明していきます。
①個別費用法
この方法は『勘定科目法』とも言われ、各費用項目を性質に基づいて個々に固定費・変動費に分別する方法です。
《中小企業庁『中小企業の原価指標』》
1.製造業
- 固定費(直接労務費・間接労務費・福利厚生費・賄費・減価償却費・賃借料・保険料・修繕料・電力料・ガス料・旅費・交通費・その他製造経費・通信費・支払運賃・荷造費・消耗品費・広告(宣伝費)・交際費(接待費)・役員給与手当・事務員(販売員)給与手当・支払利息・割引料・租税公課)
- 変動費(直接材料費・買入部品費・外注工賃・間接材料費・その他直接経費・重油等燃料費・当期製品仕入原価・物品税・酒税)
2.販売業(卸売業・小売業)
- 固定費(販売員給料手当・車両燃料費(卸売業の場合50%)・車両修理費(卸売業の場合50%)・消耗品費・販売員旅費・交通費・通信費・広告(宣伝費)・その他販売費・役員(店主)給料手当・事務員給与手当・賄費・福利厚生費・減価償却費・交際費(接待費)・土地建物賃料費・保険料(卸売業の場合50%)・修繕費・光熱(水道)費・支払利息(割引料)・租税公課・その他営業費)
- 変動費(売上原価・支払運賃・支払荷造費・荷造材料費・支払保険料・車両燃料費(卸売業の場合50%)・車両修理費(卸売業の場合50%))
《日本銀行『主要企業経営分析』》
- 固定費=労務費+経費(製造費用)-外注加工費-電力料-ガス水道料+{一般管理費(販売費)-荷造運搬費}+営業外費用-営業外収益
- 変動費=支出{売上原価+一般管理費(販売費)+営業外費用-営業外収益}-固定費
※中小企業庁方式では、諸勘定の明細資料が入手できないと計算できないが、日銀方式では、一部の資料の入手で費用分析をすることが出来ます。
②総費用法
この方法は、2期間の売上高の増加とそれに対応する費用の増加分をすべて変動費とみなし、売上高の増加額で割ることで変動費率を計算し費用を分解する方法です。
《参考例》
売上高 200万円(1期)/ 300万円(2期)⇒100万円(増加額)
総費用 120万円(1期)/ 160万円(2期)⇒40万円(増加分)
40万円(総費用増加分) ÷ 100万円(売上高増加分) = 0.4
総費用(1期) 120万円 / 変動費80万円(売上高200万円×0.4) / 固定費40万円(総費用120万円-変動費80万円)
総費用(2期) 160万円 / 変動費120万円(売上高300万円×0.4) / 固定費40万円(総費用160万円-変動費120万円)
【あとがき】
企業収益を図るうえで『損益分岐点』を意識しておくことはとても重要となります。
新しく起業する際、費用をかけ準備をしていき営業活動が始まるわけですが、毎月の売上によりその費用がどれだけ回収できたかを見定めることが出来れば、あとは内部留保を増やすだけです。そのため『費用』と『売上』とは表裏一体となるため売上だけに意識をするのではなく『費用分析』をすることはとても重要です。
投資にもIRR(キャッシュフロー)がありますが、これらの考えも同じです。『使った費用(投資)はいつ回収できるのか』がベースとなりますので、『費用』をかける際には回収期間をあたまに入れた上で検討してみましょう。
【その他参考】