【安全性分析(流動負債・固定負債・株主資本)とは】
Studing Money⑩-4-3
目次
【安全性とは】
安全性は一般的に『健全性』『安定度』『流動性』『資金繰り状態』などを捉えることが出来ます。
《健全性》
企業経営の安全度をいい、主として税務面での健全性に主眼を置いています。貸借対照表(B/S)の各勘定科目の内容を重視し、支払手段である『資産』と支払い義務である『負債』をみて支払う能力が十分にあるかどうかに着目します。
《安定度》
支払手段である資産と支払義務である負債の割合、および流動・固定の構成割合を把握することで企業経営の『安定度』がわかります。
《流動性》
流動資産で短期的な支払が予定されている流動負債がカバーできているか、短期的な調達と運用の『バランス』が取れているかを見るものです。
《資金繰り状態》
資金の運用・調達の状況は、つきつめれば資金繰りと同じです。『資金繰り』とは、日常的、短期的な現金を中心とした資金繰りだけでなく資金という概念を中心とした長期の資金繰り状況を含む広い意味でもあります。安全性とは企業経営の健全性を意味しますが、企業が健全であるということは同時に『資金繰りが順調』であることを意味します。
【安全性分析と貸借対照表】
《貸借対照表における安全性分析》
貸借対照表は、資金の収支状況を直接的に表すものではないですが、一時点の財政状態を示していると言われています。『財政状態』とは、企業の資金がどのような源泉から調達され、それがどのように運用されているかの流れを意味します。
《貸借対照表をベースにした主な考え方》
①資産と資本(貸借対照表上では負債・純資産)がそれぞれどのような構成になっているのか、両者の関係はどのようになっているのか(流動性・株式資本比率など)
②資金を調達し運用するにおいて、それが効率的に行われているかどうか(回転期間分析・回転率分析など)
③その期間の資金運用・調達の動きを把握し、それらのバランス状態を見る(資金移動表・資金運用表分析など)
《貸借対照表の検討方法》
貸借対照表の分析によって企業の安定性を判断しようとする場合、まず全体構造を大きく読み取った後に細部の検討を行う必要があります。
【勘定科目の検討】
《流動負債》
①支払手形
この勘定は、本業に基づく通常の営業取引において発生する支払手形を処理するものです。
固定資産を購入する営業外支払手形や金融取引に関わる支払手形は含めません。
支払手形は期日の長短に関わりなく流動負債に記載します。
営業外支払手形や金融手形は『1年基準』により流動負債と固定負債に分けて表示します。
支払手形には、担保手形。融通手形、書替継続手形(ジャンプ手形)等が含まれる場合があります。『内訳明細書のチェエク』によりこれらの存在を見抜く必要があります。
支払手形の増大は、資金繰りが困難になっている場合と取引先との力関係で支払いを引き延ばしている場合があります。
②買掛金
仕入先との間で、本業に基づく通常の営業取引において発生した未払金を買掛金と言います。買掛金は、『流動負債』に記載します。
本業以外の未払金は、『1年基準』により流動負債と固定負債に分けます。
買掛金の増加は、資金繰りが困難だったり、取引先との力関係で引き延ばしをしている場合があります。
買掛金の減少は、仕入先から早期の支払を迫られたり資金が潤沢などが考えられます。
③割引手形
割引手形は、貸借対照表上では、『脚注/注記表』で示されます。
この場合の受取手形残高は、受取手形の手持分を表示しています。
手持受取手形残高が多い場合には、内容の把握が重要となります。
『手形割引に持ち出せない』か『取引先側の要請での融通手形』が含まれている事があります。
④短期借入金
借入金は『1年基準』が適用されますので返済期限1年以内の短期借入金と1年以上でも決算日の翌日以降1年以内に返済期限が到来する部分が記載されます。
そのため『1年基準』を適用し流動比率等の比率分析は重要となります。
『運転資金所要額 ≦ 短期借入金+割引手形残高』が望ましい。
⑤仮受金
借受金は仮払金とは逆の場合に発生する科目です。
金額など不詳・不定の場合に一時的に処理をしておく未決算勘定です。
主に融通手形を発行しているケースや高利の借入がある場合があるので内容の確認は重要です。
《固定負債》
①長期借入金
長期借入金は、決算日の翌日から起算して1年を超える支払期日となっている借入金です。
『利益での償還を前提』にしていますのでキャッシュフローがポイントになります。(キャッシュフローから償還年数を割り出す)
返済されている場合には、返済原資の確認が必要となります。
②退職給付付引当金
退職給付引当金は、従業員の退職に際し退職金を支給する場合に備えて見積もり計上するものです。
中小企業では、この引当金を計上しない方が一般的です。(簿外負債となることに注意)
《株主資本(自己資本)》
株主資本は、資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式マイナス部分となります。
自己資本は、株主資本と評価・換算差額の合計となります。
(主な評価・換算差額は、その他有価証券評価差額金・繰延ヘッジ損益・土地再評価差額金・為替換算調整勘定等があります)
会計上では、資本(資本金・資本剰余金)と利益(利益剰余金)に分けます。
利益(利益剰余金)の比率が大きいときは、少ない資金で利益を留保している優良企業となります。
【あとがき】
このページでは、財務分析の中の『安全性(流動負債・固定負債・株主資本)』について説明をしました。
ここでは、主に1年間を境に短期負債(流動負債)と長期負債(固定負債)を分けております。
その他にも、CP(Commercial Paper)を耳にすると思いますが、このCPも資金調達をする一つの手段で、短期金融市場(オープンマーケット)で無担保の約束手形(償還期限1年未満)を発行し資金調達をします。その一方、社債の償還期限は通常1年以上です。
企業は資金を回すことで利益を得ますが、多少の現金は不測の事態に備え蓄えておく必要があります。その時に資金調達をする事で必要な資金を確保し事業を継続させていきます。しかしながら、資金調達の手段によっては負債(デットファイナンス)となりますので返済目途が重要となります。